鎌倉市衛生時報、3月号に寄稿致しました。
「長引く鼻かぜは、かぜじゃないかも!?」
医療法人社団浜田耳鼻咽喉科医院 濱田彩子
「鼻かぜがもう数ヶ月も治らないんです」と言って外来を受診される患者さんがよくいらっしゃいます。その場合、単なる鼻かぜではないかもしれません。
そもそも鼻かぜとは何でしょうか?鼻かぜとは、ウイルスが鼻の粘膜に炎症を引き起こし、鼻がつまり、くしゃみがでて、はじめはサラサラの水っぱな、数日すると黄色いネバネバの鼻水になり、鼻の一番奥にある鼻と喉の境目あたりが痛くなったり、場合によっては熱や全身のだるさが出たり、鼻から落ちてくる鼻水(後鼻漏)にむせて咳が出たりします。しかし、たいていが数日から1~2週間以内には治ります。実は、鼻かぜの初めの方のサラサラの水っぱなやくしゃみ、鼻詰まりという症状は、アレルギー性鼻炎の症状にとてもよく似ています。アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜上でアレルギーを引き起こす物質(抗原)、例えばホコリやダニ、スギやヒノキ、ブタクサなどの花粉などが、抗体と特異的にくっつくことでアレルギー反応を引き起こし、鼻の粘膜がむくみ鼻詰まり、サラサラの水っぱな、ムズムズしてくしゃみが出ます。鼻かぜとの違いは、アレルギー性鼻炎は抗原にさらされれば症状が出るので、毎年決まって春や秋の花粉が飛ぶ時期だけ症状が出るなら花粉によるアレルギー性鼻炎いわゆる花粉症の可能性が高いですし、一年中症状があるならホコリやダニによる通年性のアレルギー性鼻炎が考えやすくなります。また、ネバネバの鼻水や鼻詰まりが1ヶ月以上続いていて、顔面が重い、おでこや頬が痛む、ひどいと頭痛もして咳も止まらないという場合には、副鼻腔という鼻の中の空洞に炎症が起きる副鼻腔炎、昔風に言えば蓄膿症になっている場合もあります。この様に、単なる鼻かぜと思っていても、なかなか治らない場合には、実はアレルギー性鼻炎だったり、副鼻腔炎になっていることがあるのです。さらに、このような症状が長引き、鼻呼吸がうまくできないと、口をぽかんと開けてしまう口呼吸が多くなり、のどが乾燥し粘膜が荒れるため、さらにかぜのウイルスに感染しやすくなるという悪循環を招いたりもします。昨年から世界中の人々を苦しめている新型コロナウイルスなどにも、同様に感染しやすくなります。耳鼻咽喉科では、まず、鼻や喉の中を直接視て(必要があればファイバーを用います)、レントゲンやCTなどの画像検査をしたり、血液検査によるアレルギーの検査をして、診断と治療をしていきます。症状だけでは正確な診断がつきづらい可能性もありますので、“なかなか鼻かぜが治らない!”という場合にはぜひお近くの耳鼻咽喉科専門医を受診してみてください。